肥満と肥満症
肥満と肥満症は違います。
「肥満」は、カバンに荷物がたくさん入っている状態です。肥満症」は、その重みのせいでカバンの底が抜けそうだったり、持っている人の腰が悲鳴を上げたりしている状態です。すぐに荷物を減らす(治療する)必要があります。
肥満症を意志の強さだけで解決しようとするのは、骨折を気合で治そうとするようなものです。肥満症は「自己責任」と片付けられがちですが、実際には遺伝、ホルモンバランス、環境などが複雑に絡み合った病気です。自分を責める必要はありません。
肥満症の怖さは、自覚症状がないまま体の中が「ボロボロ」になっていくことです。
- 血管へのダメージ: 高血圧、糖尿病、脂質異常症をセットで引き起こし、
ある日突然、心筋梗塞や脳卒中を招きます。
- 物理的な破壊: 体重を支える膝や腰の関節が悲鳴を上げ(変形性関節症)、
日常生活の質が劇的に落ちます。
- 睡眠の質の低下: 脂肪が気道を塞ぐことで「睡眠時無呼吸症候群」に。
日中の集中力低下や、突然死のリスクを高めます。
- がんのリスク: 脂肪組織から出るホルモンの影響で、
大腸がんや乳がんなどのリスクが上昇することが分かっています。
肥満は「将来の健康の貯金を切り崩している状態」と言えます。
今は平気でも、10年後の自分にツケが回ってきます。
現代の医学において、肥満症は「根性」ではなく「科学」で治す時代です。
① 生活習慣の見直し
最も重要ですが、最も挫折しやすい部分です。
- 食事: 「食べない」のではなく「選ぶ」。タンパク質を確保し、血糖値を急上昇させない食べ方が基本です。(食べる順序の工夫など)
- 運動: 激しいランニングより、まずは「今より1日10分多く歩く」ことから。継続が全てです。
② お薬による治療
最近、肥満症治療は劇的な進化を遂げています。
- 高度肥満症への新薬: 食欲を抑えたり、満腹感を高めたり、代謝を改善したりする「GLP-1受容体作動薬」などがあります。「楽して痩せるための魔法」ではなく、依存的な食欲をコントロールするための「治療薬」です。
- 注意: 安易に使うのは非常に危険です。必ず医師の管理下で行う必要があります。
③ 外科手術
BMI(肥満度)が非常に高く、他の方法で効果が出ない場合、胃を小さくする手術(減量手術) が行われることもあります。
「明日から別人のように頑張る」のはやめましょう。100%の確率でリバウンドします。
- 「80点の継続」を目指す: 100点を1週間続けるより、 60点を1年続ける方が体は変わります。
- 体重計の数字に一喜一憂しない: 脂肪が減って筋肉が増えれば、体重が変わらなくても体型と健康状態は改善します。
- 専門家を頼る: 医療機関は、あなたを叱る場所ではなく、一緒に戦略を立てる場所です。


