Archive for 2010年5月

内臓脂肪

5月 25th, 2010

    体脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があります。ダイエットの目的はこの体脂肪を減らす目的としていますが、最近では、内臓脂肪を減らすためにダイエットをしているという人も少なくないようです。内臓脂肪は肝臓、腎臓など内臓のまわりに存在し、蓄積されるのが早いですが、分解されるのも早いという性質を持っています。
 どのような理由で、内臓脂肪は危険視されているでしょうか?
 動脈硬化に起因する脳梗塞、心筋梗塞など生死に関わる恐ろしい病気は、
内臓脂肪の増加によって起き易い高脂血症や高血圧と関わりがあるからです。
 内臓脂肪は人間の体に害を与える悪玉的な存在であるという事実が重く見られています。内臓脂肪は過剰な血糖の上昇を安定させるのに必要なインスリンの働きを低下させます。インスリンの効果が減ると、糖尿病などの生活習慣病に罹り易くなります。時に致命的になる心筋梗塞や脳梗塞は、血糖値の上昇で動脈硬化が進み、血管の脆弱性や血栓ができることなども一因です。
  だから、内臓脂肪が増えても健康にいい影響はありません。コツコツと食事療法と運動療法(特に有酸素運動)を続けることで、内臓脂肪の増えにくい体作りを目指しましょう。

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ジェネリック医薬品に対する当院の考え方

5月 17th, 2010

    ジェネリック医薬品(Generic drug、後発医薬品とも言います。)とは、成分そのものやその製造方法を対象とする特許権(パテント)が消滅した先発医薬品について、特許権を持つ製薬会社ではない他の製薬会社がその特許の内容を利用して製造した、同じ主成分を含んだ医薬品をいいます。

  テレビCMなどで宣伝されたのとは裏腹に、完全に「先発医薬品と同じ成分で,同じ効き目の医薬品で,先発医薬品より安価な薬」とは言えない現状があるようです。というのは一つの先発医薬品に対して複数のジェネリック医薬品があり、(先発医薬品の特許権が消滅するとゾロゾロ沢山出てくるので「ゾロ」「ゾロ品」「ゾロ薬」等とも呼ばれていました。)製造元も大手製薬会社の子会社から聞いたことの無いところまで玉石混交です。

 当院は製造元や製剤を注意深く選べば、上述のような問題はほとんど無くなるのではないかと考えています。

 患者さんの経済的負担軽減という観点からも当院は、 ジェネリック医薬品を処方することに基本的には賛成です。基本的にと書かせて頂いたのは、種々の情報を調べた結果、お勧めできないものも存在すると思われます。

 発売して一年未満の新薬や発売して年数の経っていないクスリにはジェネリック医薬品はありません。従って、患者さんの状態を考慮した結果、「全てをジェネリック医薬品で」との御希望に反し、「これだけは新薬や先発医薬品で」ということをお薦めする状況も出ることをご理解下さい。

 要するに、『適剤適所』が良いと考えています。

葉酸

5月 10th, 2010

「葉酸」は、豆類や、ほうれん草などの緑黄色野菜に含まれる水溶性ビタミンB群の一種です。ビタミンB12とともに、造血作用があることが特徴で、赤血球をつくる作用のみならず、代謝に深く関与し、タンパク質や核酸の合成に作用して細胞の生産や再生を助け、体の発育を促進し、細胞が新しくつくり出される時に必要な栄養素です。

日本ではまた広く知られていませんが、高齢者の認知症や脳卒中を予防する効果があることが、アメリカなどの調査で明らかになりました。10年前、アメリカでは、穀物への葉酸添加が義務付けられ、そのおかげで、脳卒中の死亡率が急速に低下したそうです。

1998年、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、主食となる穀類への葉酸を添加することを義務付けました。これにより、新生児の二分脊椎のような「神経管欠損障害」がおよそ2割減少しました。(2001年の報告)

アメリカ以外の国で穀物への葉酸添加を実施しているのは、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで、いずれの国でも、神経管欠損障害の発生頻度を大幅に減らす成果をあげているそうです。

葉酸の摂取は、新生児に対してだけでなく、高齢者に対しても多大な恩恵をもたしてくれることが明らかになったのです。アメリカは、葉酸の摂取を推進することにより、1998年以降、脳卒中による死亡率を、10万人中180人から150人にまで減少させました。

更に、1998年以降、アメリカ国民の血中のホモシステインが減少したこともわかっています。葉酸やビタミンB12、ビタミンB6はアミノ酸の一種であるホモシステインの産生を抑制することが知られています。ホモシステインの血中濃度が高くなると、認知症や動脈硬化症のリスクが高くなるそうです。(これらのビタミン摂取による血中ホモシステイン値の低下が、虚血性心疾患の予防につながると大きな期待も持たれています。)葉酸の摂取は、ホモシステインを減少させ、動脈硬化や認知症を予防してくれるわけです。

日本国内に目を転じると、まだ「葉酸」の必要量を十分に摂取できていない状況にあります。高齢になってからだと「葉酸」は吸収されにくくなります。脳卒中や認知症の発症を防ぐためには、若いうちから「葉酸」の摂取に努めた方がいいかも知れません。